ふくわらい
西加奈子

 

審査員による総評
ユニークで圧倒的な言葉の力によって、
「物語」でしか成しえない世界を表現した。
「ふくわらい」のパーツがすべて集まったとしても、
なお語り切れない何かが立ち上がってくる作品である。

選考委員の上橋菜穂子氏による選評、受賞者の西加奈子氏のことばが
新潮社『考える人』2013年夏号に掲載されました。

 

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第一回の選考なので、選考会に臨むまで、小川洋子さん、宮部みゆきさんと三人で、
まずは、「河合隼雄物語賞」に相応しい「物語」とは何か、
その基本的な考えを擦り合わせることから始めなくてはと思っていた。

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しかし、実際に審査に入ると、作品そのものが、私たちの「物語観」を浮かび上がらせ、
ぐんぐんと、ひとつの太い流れへと導いていった。

               ◇

宮部さんがこの作品を「絵の具を厚く置いて、塗り重ねていったような」と表現しておられたが、
この作品は、そういう「言葉以外のイメージ」で表現しなければ伝えられない、
どう伝えてもこぼれてしまうものが残る、
「物語であることでしか命を持ちえない作品」であり、それゆえに、これを受賞作とした。
(上橋菜穂子選考委員による選評より引用)

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