第9回 河合隼雄学芸賞

〈選考委員〉岩宮恵子  中沢新一   山極寿一   鷲田清一(五十音順)

 

□授賞作□

 

『「犠牲区域」のアメリカ 核開発と先住民族』

                                                                                                            2020年9月24日刊行 岩波書店

 

石山徳子(いしやま のりこ)

 

 

□著者略歴□

1971年東京都生まれ。日本女子大学文学部英文学科卒業。ラトガース大学大学院地理学研究科博士課程修了(Ph.D. 地理学)。専門は人文・政治地理学、地域研究(アメリカ合衆国)。明治大学政治経済学部、大学院教養デザイン研究科教授。著書に『米国先住民族と核廃棄物――環境正義をめぐる闘争』(明石書店、2004)、『震災・核災害の時代と歴史学』(共著・青木書店、2012)、『「ヘイト」の時代のアメリカ史――人種・民族・国籍を考える』(共著・彩流社、2017)などがある。

 

□授賞理由□

核開発に潜むアメリカのセトラーコロニアリズム(定住型植民地主義)を、先住民の犠牲という観点から描いた意欲作。ここにえぐり出されたアメリカの負の歴史は、わたしたち日本人が原発事故や放射能汚染・核廃棄物処理やエネルギー政策の未来を考えるにあたり、格好の映し鏡になるであろう。

 

□受賞のことば□

この度は、大変栄誉ある素晴らしい賞を誠にありがとうございます。思いがけないことで驚き、また身のひきしまる思いでおります。この本は、北米各地でこれまで歩いてきた、様々な場所で出会った方の、物語の力強さ、やさしさに支えられながら書くことができました。今日の受賞を励みに、忘れられてきた、もしくは見えなくされてきた物語を掘り起こすような仕事をこれからも地道に続いてまいりたいと思います。本当にありがとうございました。

 

※正式な受賞の言葉や選評は「新潮」8月号(7月7日発売)誌上で発表されました。