ナチスのキッチン
藤原辰史

 

審査員による総評
本書は食事の場が、政治と経済の主戦場になっていくプロセスを、
現代の食の風景の原型として描き出している。
自然と人間のちょうつがいの場所に関心を持ち続けた河合隼雄が、
論じるべくして論じなかった分野での冒険的な一作。

選考委員の中沢新一氏による選評、受賞者の藤原辰史氏のことばが
新潮社『考える人』2013年夏号に掲載されました。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

なにが選考の基準になるか。それは河合先生ご自身の人格と思想である。

               ◇

ではその思想とはなにか。これも難しい質問だ。
山極寿一さんが途中でぼそっと語られた言葉が決め手となった。

河合先生は人間と自然の間をつなぐ蝶番を探し、
それをみごとな言葉で表現することに努力された思想家なのではないか。
ゴリラ研究者ならではの卓見である。

               ◇

その結果選ばれたのが、藤原辰史さんの『ナチスのキッチン』であった。
食べることはセックスと並んで、人間と自然をつなぐもっとも強固な蝶番である。

               ◇

ナチスのキッチンを研究することは、自然=技術=政治を串刺しにすることであり、
そこで見えてきたことの多くは、ほとんどそのまま現代の私たちの生のありかたを照らし出す鏡になっている。

(中沢新一選考委員による選評より引用)

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆