河合隼雄と哲学者の中村雄二郎さんの対話からなる『トポスの知』という本がありました。

元々は1984年に出版されたもので、

その後、1993年に新装版が出版されていたものの、これも絶版となっていましたが

このたび、こんなにすてきな装丁に生まれ変わって復刊されることになりました。

 

 

比較的長期間、絶版になっていたにもかかわらず

箱庭療法を学ぶ人の間ではこの本はよく知られているように思います。

 

河合隼雄がスイスから帰国後に、これは日本人に合うという直感のもと、

箱庭療法から導入していったことはよく知られています。

しかし、正面切って箱庭について語っている本は意外と少なく、この本は河合隼雄が語る

箱庭療法のエッセンスを知るのにとてもよいものだったのかもしれません。

 

箱庭療法とは、最近、テレビや雑誌によって作られている心理学の魔術的イメージ

(これをやれば深層心理がわかる!というような、心理学=すごい魔法であるような印象)とは異なり、

箱庭をつくるということは、まさに箱庭をつくるというたったそれだけのことだ、という側面があります。

箱庭はあくまで箱庭、つまり砂とミニチュアというモノなのであり、それ以上のものではないと言えます。

 

しかしこの本では、箱庭療法というのが、ただ箱庭をつくる、ミニチュアを置く、それだけのこと、

だけど同時にそれだけのことではないんだ!ということが書かれているように思います。

人のこころのすごいところは、「たったそれだけのことであり、でもそれだけでない」ということを体験できることではないでしょうか。

 

本書からは、そうした箱庭療法のエッセンスを

専門家の方もそうでない方も、感じていただけるのではないかと思います。

 

 

ひそかなお気に入りポイント かわいい帯デザイン(裏表紙側)