今日6月23日は河合隼雄の誕生日です。
雨男と言われた河合隼雄らしい季節を迎えました。
例年同様、河合隼雄の誕生日を機に、
この1年で出版された河合隼雄関連の本をご紹介します。
昨年6月に増補新版の形で刊行されたのは、
『中空構造日本の深層 増補新版』(中公文庫)。
1982年に最初に発表された本書は、
河合隼雄が日々の心理療法実践ともに、
日本神話さらには昔話やファンタジーを掘り下げ考えることを通じて、
日本人のこころの構造が「中空構造」を成していることを見出しました。
中空構造には長所も短所もあることも示しつつ、
増補新版となった本書の帯文にあるように、
「対立や矛盾との共存可能なシステム」を
日本社会の深層にあることを示唆しました。
現代社会の諸問題を考えるヒントとなる一書です。
『あなたが子どもだったころ 完全版』(中公文庫)は、
同タイトル
『あなたが子どもだったころ』(光村図書出版、楡出版、講談社+α文庫)、
『子ども力がいっぱい――河合隼雄が聞く「あなたが子どもだったころ」』
(光村図書出版)の2つの対談集を合本しての充実の文庫化。
16名の方々との17の「子どもだったころ」を振り返る対談と、
それぞれの対談後の河合隼雄によるエッセイが収録され、
読みどころが満載です。
河合隼雄・長田弘『子どもの本の森へ』(岩波現代文庫)では、
臨床心理学者と詩人・児童文学作家が
たくさんの児童文学や絵本について語り合います。
そこから、子どもの本に語られる「真実」が
われわれの心に直接にはたらきかけ、
私たちの生きる社会の姿を明らかにしてくれることが浮き彫りになって行きます。
また他にも、『中年危機』が中国の上海三联書店から
中国語に翻訳されて出版されました。
社会の急速な変化の中で、中年の危機に直面しているのは
世界の問題であることを思わされます。
『あなたが子どもだったころ』に新しく寄せられた
小川洋子さんによる解説に、
「大人になって行き詰った時、見据えなければならないのは、
未来の達成目標数値、などではなく、
過去の子ども時代なのではないだろうか」とあるように、
成熟してきたと思われた社会の行き詰まりを迎えている今こそ、
われわれ社会の来し方、歴史を振り返ることの大切さを、
そしてそこからいかなる「真実」をすくいとるかにかかっていることを、
河合隼雄の著作たちが教えてくれているようです。