明治大学野生の科学研究所公開講座「南方熊楠の新次元」第3回が
明治大学リバティホールにて開催されました。

中沢新一明恵イベント

「明恵と熊楠」と題された本日の講座ではまず、
中沢新一氏より予定時間を超えての熱のこもった講演が行われました。

簡単にその一部をご紹介します。

中沢氏は熊楠と明恵をつなぐものとして、夢・瞑想・華厳経をとりあげます。

たとえば、夢を通して、私たちは普段意識しているものとは異なる次元に出会うことができます。

それは、熊楠が愛用した「顕微鏡」を通してモノを見ることにも共通しています。
顕微鏡は私たちに、そのモノの、普段目に見えているのとは全く異なる美しい姿を見せてくれます。

熊楠はサイエンスの方法論に則り、すぐれた研究論文も残していますが、
夢や瞑想のような体験が垂直に切り開く宇宙を、現実として生きた人でもありました。

河合隼雄は1987年に『明恵 夢を生きる』を著しました。
この書のタイトルにも現れているように、
明恵もまさに、「夢を生きた」人でした。

両者は、非現実に呑み込まれるという形ではなく、
夢の形式が組み込まれたこころによって、
夢の世界と現実の世界を同時に生きた人であったと中沢氏は言っています。

講演の後、河合俊雄代表理事との約1時間にわたる対談が行われました。

熊楠とユングは、粘菌と錬金術からみてもおもしろいのでは(ネンキンとレンキン!)、などと
河合隼雄も顔負けのダジャレ?!でありながら、
同時に本質をついた問題提起に始まり、

河合隼雄が明恵などを通じて考えていた
ヨーロッパとは異なる日本人なりの主体のあり方が
「自然(じねん)」だったのではないか、など
話題は多岐にわたりました
(「じねん」について、詳しくは『日本人の心を解く』岩波現代全書)。

「語り」のもつ線形的な構造にとどまらない
アクロバティックな講演・対談は
南方熊楠のおもしろさを浮き彫りにすると同時に
明恵についても改めて見直してみたくなるような時間となりました。